by LabyrinthWalk |
2017年 04月 06日
米国のユダヤ教聖職者
ハロルド・S・クシュナーの著作を二冊ご紹介します。 * * * * 一冊目は、 『なぜ私だけが苦しむのか 現代のヨブ記』。 クシュナーの息子さんは難病を持って生まれ、 十代の前半で亡くなりました。 息子さんと人生を共にすることを通して彼は、 神をどのような存在と思い、どのように祈ることが 苦難を生きる力になるのかを改めて問うことになりました。 彼は、神の全能性を否定することで、 現代人の心に働きかけ得る神の姿を描こうとします。 なぐさめの常套句や聖職者の言葉が、 苦しむ人の役に立たないさまにも触れられています。 私はこの本を通して「何をどう祈るか」を教わりました。 * * * * もう一冊は、 『私の生きた証はどこにあるのか:大人のための人生論』。 この2月に日本語版が出版されました。 原書出版が1986年で、映画「E.T」などが例示されているせいか、 いくつかの出版社から「古い」と断られたそうです。 けれども、内容は今に通じます。 この書をクシュナーは五十歳で書きました。 「二十歳ではわからず、五十歳になってわかることの ほとんどは伝達できないものである」という、 米国の政治家スティーブンソンの言葉が引用されているように、 彼が伝えようとしていることの多くは伝え得ないことでしょう。 けれども、何かを受け取る人が居たことによって、 この本も前著同様、世界的なベストセラー、ロングセラーになりました。 この二書がユダヤ・キリスト教の伝統に触れたことの無い方に どのように受け取られるのかは分からないのですが、 「祈り」や「人生の意味」に思いを巡らせている人には 参考になるのではないかと思います。 『なぜ私だけが苦しむのか 現代のヨブ記』斎藤武訳、岩波現代文庫、2008年。 『私の生きた証はどこにあるのか 大人のための人生論』松宮克昌訳、岩波現代文庫、2017年。
by LabyrinthWalk
| 2017-04-06 10:12
| 関連情報
|
ファン申請 |
||